■Vol.211 (2023年12月配信)
密かなブームとなっている
“春画”の魅力に迫る!
じつは今…女性たちの間で“春画”が密かに流行っているのをご存じでしょうか?
2023年には春画を題材とした映画が2本公開され、そこそこ話題となりましたし、春画展を開けば多くの女性客が訪れるといいます。
女性に敬遠されがちなアダルトコンテンツが多い中で、なぜ近年“春画”が静かなブームになっているのか? 今回はその理由と背景を紐解いてみたいと思います。
春画は庶民に愛された身近な娯楽
春画とは、平安〜江戸時代にかけて肉筆や木版画で描かれた性的な絵画のこと。喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川国貞など、著名な浮世絵師のほとんどが春画を手掛けていました。
とくに江戸時代…多くの日本人がまだ性をおおらかに肯定する精神を持っていた頃、春画は“笑い絵”ともいわれ、身分を問わず多くの老若男女が娯楽として愛好。
そこには数多の絵師・彫師たちが持てる画力と技巧を注いでトコトン真面目に人間の性を表現した作品が数多く残されています。
なかには2次創作のようなパロディものも存在し、庶民に親しまれていた「伊勢物語」や「源氏物語」などの古典を題材に、それらを面白おかしく性的なパロディにした作品も多くの人が楽しんでいたようです。
男女が等しく性を楽しむ“和合”がカギ
ではなぜ、そんな春画に現代女性が魅了されるのでしょうか? それは春画が“和合”という、男女がともに性を楽しむ姿を描いているからであり、これこそが近現代が男性の性的ファンタジーを満たすためだけに表現してきたアダルト作品との大きな差異といえるでしょう。
一般的に女性がエロ本やAVの多くに嫌悪感を抱くのは、それらが徹底的に男性目線で、性欲を持って女性を消費するような振る舞いや描かれ方が多いからだといわれています。
もちろん、春画の中にも暴力的な表現をしたものはあるのですが、そうした作品では男性は醜く描かれることがほとんど。やはり割合としては、男女等しく性を楽しんでいる様を描いている作品が圧倒的に多いのです。
夫婦円満・子孫繁栄の縁起物としても
この男女が一緒に性を満喫する“和合”という表現は、夫婦円満・子孫繁栄にもつながるとされ、春画はある種の縁起物ともされてきました。
実際、嫁入り道具として持たされる風習は昭和初期ぐらいまでつづいていたらしく、日露戦争までは生きて帰ってくるための願掛けとして兵隊に持たせていたともいわれています。
まぁ…さすがに春画にそこまでの神通力はないでしょうが、今のアダルト作品にはない“和合”というコンセプトが大きな魅力となって、現代女性の心に響いているのは確か。
みなさんも機会があれば、ぜひ生の春画や関連映画を鑑賞してみていただきたいと思います。きっと何か新鮮な発見があるかもしれませんよ。
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