■Vol.198 (2022年11月配信)
「HPVワクチン」について、
知っておいて欲しいこと
新型コロナの第8波とインフルエンザの同時流行が迫りつつある中、政府や医療従事者たちはこぞって両方のワクチン接種を呼びかけています。
確かにワクチンで防げる病気なら、できるだけ接種して予防したいもの。最近はテレビCMなどで帯状疱疹のワクチン接種も推奨されていますが、同様に今「HPVワクチン」の接種について、少しずつ世間の注目が集まりはじめているのをご存じでしょうか。
子宮頸がんの原因は約95%がHPV
HPV(ヒトパピローマウイルス)とは、おもに“子宮頸がん”の発症因子とされているウイルスで、HPV感染を防げば子宮頸がんを高確率で予防できるため、日本でも2013年から女性限定で定期接種のワクチンとして承認されていました。
ところが、承認後すぐに安全性についての懸念が発覚し、厚生労働省は長いこと“積極的勧奨”を控えてきたため、9年経った現在でも接種率は先進国ワーストの約4%に留まっています。
幸い、最近になって安全性に問題のないことがわかり、2022年4月には積極的勧奨が再開されたため、少しずつ認知度が上がってきたものの、このワクチンについては“もうひとつの課題”が待ち受けていたのです。
多くの人が保有する性感染症のひとつ
それは日本でのワクチン接種が“女性限定”であること。HPVは性交渉を介して広がるウイルスで、もっともよく見られる性感染症のひとつです。
そのため、女性だけではなく男性もワクチンを接種しないと、パートナー間の感染が防げず、社会的な感染抑制の効果も不十分であると考えられています。
また、HPVワクチンは男性も発症する中咽頭がんや肛門がん、尖圭コンジローマなどの病気も予防できることから、世界的には男性への接種も積極的に進められているのが現状なのです。
男性のワクチン接種は費用が大きな壁
一応、2020年12月には男性へのワクチン接種も承認されているものの、基本は自費。接種には大体5〜6万円もの費用が掛かるため、最も必要とされる若い世代だと負担が大きすぎて断念するケースも…。
この問題については先日、国際基督教大学の学生たちが「男性にもHPVワクチンの無料接種を!」という要望に賛同する署名をオンラインなどで1万5343人分集め、厚生労働省に提出した…という報道があったので、ご存じの方も多いことでしょう。
性交渉をはじめる前に男女接種が理想
子宮頸がんは日本国内で毎年1万人以上が罹患し、年間約3000人もの女性が亡くなっている病気です。罹患者を少しでも減らすためには、性交経験をする前にHPVワクチンを接種することが効果的であり、その重要性は男性であっても変わりません。
ただ…この“HPVワクチンの男女無料接種”については、個人的に応援したいと思ってはいるものの、世の中にはワクチン自体に抵抗感を持つ方も一定数いらっしゃいますので、みなさんも一度、身近な人たちと賛否について話し合ってみてはいかがでしょうか。
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